建築業界に就職する高校生・大学生や新入社員・若手社員のみなさんは最初に図面の読み方で苦労することが多いと思います。建築実務では大量の図面を効率よく読み解いて仕事を進めていかなくててはなりません。しかし、意外と図面の見方って教えてもらう機会が少ないものです。この記事ではこれから建築実務をはじめる人向けに図面の見方のポイントをお話していきます。
【 先輩は教えてくれない図面の見方と読み方のコツ 第2回 】
意匠図・構造図・設備図の違いと読み方のコツ
「とりあえず図面見といて!」
と言われてまず感じるのが「図面って種類が多すぎて、何を見ればいいかわからない…」というモヤモヤではないでしょうか?
とくに「意匠図」「構造図」「設備図」という三大図面。
名前は知っていても、それぞれどんな役割があって、どう読み分ければいいのかまでは教わらないことも多いはず。
本記事では、それぞれの図面の違い・役割・読み方のコツを丁寧に解説しながら、
図面を読むときに必ず意識しておきたい【整合性の確認ポイント】もご紹介します。
建築図面は「3つの分野」が連携してできている
建物は、ひとつのチームだけでつくられているわけではありません。
大きく分けると、以下の3つの専門分野がそれぞれの視点から図面を作成しています。
図面の種類 | 主な内容 | 図面の例 |
---|---|---|
意匠図 | デザイン、間取り、仕上げ、使いやすさ | 平面図・立面図・断面図・建具表・仕上表 |
構造図 | 耐震性、構造計算に基づく骨組みの設計 | 柱梁伏図・配筋図・基礎伏図・構造詳細図 |
設備図 | 電気、給排水、空調、換気などのインフラ | 電気設備図・給排水図・空調換気図 |
この3種の図面は建物の3方向の視点といっても過言ではありません。
それぞれが「独立した専門図」であると同時に、一つの建物をつくるために連動している図面でもあるのです。
【1】意匠図とは?
「意匠」とはデザインや設計意図を表す言葉。
意匠図は、建物の外観・間取り・内装など、見た目や使い勝手を中心に描かれています。
建物の全体像と方針を決めている図面です。
よく使われる図面
- 配置図(建物の位置・方角)
- 平面図(部屋の間取りや家具、開口部など)
- 立面図(建物の外観・高さ)
- 断面図(天井高や床構成などの断面的な情報)
- 建具表・仕上表(ドアや窓、内装材の種類)
読み方のコツ
- まずは平面図から全体像をつかむ
建物内の部屋構成や動線がわかります。 - 断面図で「高さ感覚」を補完する
階高や天井の形状、床の段差など、平面図だけではわからない要素を把握。 - 仕上表や建具表で仕様を確認する習慣をつける
材料の違いはコストや工事内容にも直結するので、注意深く読みましょう。
【2】構造図とは?
構造図は、建物が地震や荷重に耐えられるように設計された図面です。
柱や梁、基礎といった「構造体」の配置・寸法・補強方法などが詳細に描かれています。
見えない骨組みを表している図面です。
よく使われる図面
- 柱伏図・梁伏図(フロアごとの構造部材の配置)
- 基礎伏図(地盤と接する部分の構造)
- 配筋図(鉄筋の種類・ピッチ)
- 断面詳細図
読み方のコツ
- 構造部材の位置と寸法を意匠図と照合する
特に開口部と梁・柱の位置関係は、施工上の衝突ポイント。 - 鉄筋やコンクリートの厚さ・本数に注意
施工ミスにつながる部分なので、必ず確認しましょう。 - 専門的な記号に慣れる
「D13@200」など、構造図特有の表記ルールを理解することで精度が上がります。
【3】設備図とは?
設備図は、建物内の電気・水道・空調・換気などを設計した図面です。
配線・配管・機器の配置が記号で表現されており、施工の際には非常に重要な情報源となります。
よく使われる図面
- 電気設備図(照明・スイッチ・コンセントなど)
- 給排水設備図(トイレやキッチンの水回り)
- 空調設備図(エアコン・ダクトの配置)
- ガス・防災設備図(火災報知器、ガスメーターなど)
読み方のコツ
- 記号の意味を覚えておく
設備図では図記号の理解が重要。「●」や「□」など記号が意味する機器を把握しましょう。 - 配管・配線の経路を意識してトレース
現場でのルート確保に直結します。構造体との干渉も確認ポイント。 - 天井裏や床下の【見えない情報】をイメージする
設備図は立体的な読み取りが求められます。
【4】図面は【セット】で見るのが基本!整合性を見抜く目を養おう
現場では、「図面を見比べる力」が非常に重要です。
なぜなら、意匠図・構造図・設備図は別々に描かれながらも、現場で同時に成立しなければならないから。
たとえばこんなチェックが必要になります
- 構造の梁が通っている場所に、ダクトが通る計画になっていないか?
→ 干渉が起きると現場で手戻りが発生します。 - 意匠の開口部に柱がかぶっていないか?
→ ドアが開かない、窓が設置できないといった問題に。 - 設備機器が意匠図の家具とぶつかっていないか?
→ 給湯器やコンセントの位置は実際の生活に影響します。
これらを防ぐためには、3種の図面をセットで読み、整合性を確認する力が不可欠です。
新人のうちは難しく感じるかもしれませんが、「同じ場所を3枚の図面で照らし合わせる」クセをつけることで、少しずつ目が鍛えられていきます。
図面が読めると「建築が楽しくなる」
今回紹介した「意匠図」「構造図」「設備図」は、それぞれ役割も視点も異なる図面ですが、ひとつの建物をつくるためのパートナー図面です。
- 意匠図=使いやすさと見た目の設計
- 構造図=建物の強さを支える設計
- 設備図=暮らしを支えるインフラの設計
これらを読み解くには、「単体」ではなく「組み合わせ」で見る目が必要です。
次第に、図面と現場の関係がクリアになってきて、図面を読むことが面白くなってきますよ。
わかりやすく