建築業界に就職する建築学生や新入社員・若手社員のみなさんは最初に図面の読み方で苦労することが多いと思います。建築実務では大量の図面を効率よく読み解いて仕事を進めていかなくててはなりません。しかし、意外と図面の見方って教えてもらう機会が少ないものです。この記事ではこれから建築実務をはじめる人向けに図面の見方のポイントをお話していきます。
【 先輩は教えてくれない図面の見方と読み方のコツ 第7回 】
施工図って何?設計図との違いと【現場に効く】読み方を覚えよう
新人のうちは「この図面、よく見たらちょっと違う…?」と感じることがあります。
それもそのはず、現場では【設計図】とは別に【施工図】という図面が使われているのです。
今回は、建築現場でよく聞く「施工図」と「設計図」の違いを丁寧に解説します。
さらに、施工図を読むときに意識すべきポイントも紹介しますので、「ただ眺めるだけ」から卒業しましょう。
設計図=設計者の意図を伝える図面
まず、設計図とは何かをおさらいしましょう。
設計図は、建築士や設計担当者が「こういう建物にしたい」という意図やコンセプトを形にした図面です。
主に以下のような目的で作られます。
- 建築確認申請に使用する
- クライアントに完成イメージを伝える
- 見積りや発注のための基礎資料になる
- 現場に基本的な方向性を伝える
設計図はあくまで「指針」であり、「この通りに作れば必ず納まる」とは限りません。
それを【現場で実際に作れる形】に落とし込むのが、施工図の役割です。
施工図=設計図をもとに【建てられる形】に落とし込んだ図面
施工図は、設計図をもとに施工者側(施工管理、協力業者、施工図担当者など)が作成する図面で、次のような役割を持っています。
- 納まりを具体的に検討し、調整を反映
- 材料や部材のサイズ、施工手順を詳細に明記
- 職人や現場作業員が「どう作るか」を共有するための資料
つまり、施工図は【「図面の最終調整版」「現場で実際に使う仕様書」】と言ってもよいでしょう。
設計図と施工図は、どこが違う?
両者の違いを分かりやすく整理してみます。
比較項目 | 設計図 | 施工図 |
---|---|---|
作成者 | 設計士・設計担当者 | 施工管理・協力業者 |
目的 | 建物の意図・構成を示す | 実際の納まり・施工を示す |
情報の粒度 | 全体構成や寸法、仕様の大枠 | ミリ単位の納まり、施工方法まで詳細 |
読者 | クライアント・役所・施工側 | 現場の職人・施工管理担当者 |
実際に使う場面 | 計画・打合せ・申請時 | 現場の施工、段取り、検査時 |
なぜ施工図が必要なのか?
図面には、「図面に描かれていないけど、現場では必要になること」がたくさんあります。
例えばこんなケースです。
- 壁と天井の取り合いをどう処理するか(見切り材の納まり)
- 床仕上げの高さと建具のクリアランス
- 空調ダクトと梁・配管の干渉対策
- 照明器具の配置と実際の天井構造の関係
これらを図面上であらかじめ調整・検討しておくことで、現場での手戻りやトラブルを防ぐことができます。
その調整結果が「施工図」に描かれていくわけです。
施工図を読むときのコツ
新人でも、以下のポイントを押さえておくと「読み方がうまいね」と言われやすくなります。
1. 設計図と見比べる
- 施工図を見るときは、必ず設計図とセットで確認しましょう。
- どこが変更されているか?どの情報が追加されているか?をチェック。
2. 【納まり】を意識する
- 断面詳細図や納まり図には、「実際にどう作るか」が細かく描かれています。
- 壁の厚み、天井の吊り方、サッシの枠の付き方など、構成を立体的にイメージする練習をしましょう。
3. 他業種との関係を見る
- 施工図には、電気・設備との取り合いも描かれます。
- 「設備が通る場所に構造部材がある」「配管と照明が干渉している」など、干渉チェックの目線を持つと一歩進んだ読み方になります。
施工図に描かれていないこともある
注意点として、施工図といえどすべてが完璧に描かれているわけではありません。
- 実際の現場での調整(微調整・取合処理など)は、現場監督や職人の判断に委ねられることも多い
- 修正履歴や最新図面の反映ミスも発生しやすい
だからこそ、【図面を『鵜呑みにしない力』】が大事になります。
まとめ:施工図は【現場の設計図】。読む力で一歩リードしよう
施工図は、設計図の上位互換でも、単なる下請け図面でもありません。
【「現場でちゃんと作るために必要な図面」】です。
新人のうちから、設計図と施工図の違いを理解し、それぞれを見比べながら「なぜこのように描かれているのか?」を考えるクセをつけておきましょう。
この力は、あなたの成長スピードを大きく加速させてくれるはずです。
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