建築業界に就職する建築学生や新入社員・若手社員のみなさんは最初に図面の読み方で苦労することが多いと思います。建築実務では大量の図面を効率よく読み解いて仕事を進めていかなくててはなりません。しかし、意外と図面の見方って教えてもらう機会が少ないものです。この記事ではこれから建築実務をはじめる人向けに図面の見方のポイントをお話していきます。
【 先輩は教えてくれない図面の見方と読み方のコツ 第9回 】
図面トラブルあるある&その回避術とは?
図面通りに施工したのに、「納まらない」「通らない」「ぶつかる」――
現場でこうした【図面トラブル】に直面したことがある人は少なくありません。
原因はさまざまですが、多くは「小さな見落とし」「図面間の不整合」「確認不足」によって起こります。
今回は、実際によくある図面トラブルの例と、それを未然に防ぐためのヒントを解説します。
よくある図面トラブル5選
1. 寸法は合ってるのに「納まらない」
例: 壁と壁の間に設置する什器や設備が、実際には収まらない。
原因: 有効寸法ではなく「芯々寸法」だけで判断していた。
回避のヒント:
- 寸法は【有効スペース(仕上げ後の寸法)】で考える
- 什器や設備はクリアランス(隙間)も必要な場合が多い
2. 設備と構造が「ぶつかってる」
例: ダクトが梁と干渉してしまい、現場で大きな手直しが発生。
原因: 設備図と構造図を同時に見ていなかった。
回避のヒント:
- 設備・構造・意匠の【『重ね合わせ』チェック】を習慣に
- 施工図をチェックする際は、他業種図と照らし合わせる
3. 図面と現場で「寸法が違う」
例: 図面通りに墨出しをしたら、壁が柱からはみ出してしまった。
原因: 図面の改訂が反映されておらず、旧図面を使用していた。
回避のヒント:
- 使用している図面が最新版かどうか、毎回チェック
- 特に改訂履歴(REV.)や日付を確認するクセをつける
4. 意匠と設備で「開口位置がずれている」
例: 建具の開口位置が意匠図と電気図で食い違っている。
原因: 図面間の連携不足、変更内容が反映されていなかった。
回避のヒント:
- 建具・配線・開口部などの位置関係は要チェックポイント
- 必要に応じて設計に確認して整合を取る
5. 仮設や施工スペースが「考慮されていない」
例: 仮設足場が組めない位置に設備が計画されていた。
原因: 図面上では問題ないが、施工時の動線や作業手順が想定されていなかった。
回避のヒント:
- 「この通りに作業できる?」と施工目線で図面を見る
- 現場代理人や職長とも連携し、施工性の確認を
図面トラブルを防ぐための【3つの視点】
1. 「全体を俯瞰」する力
→ 意匠・構造・設備の3図をバラバラに見るのではなく、【重ね合わせて考える習慣】が大事。
2. 「現場での納まり」を想像する力
→ 図面上では成立していても、【実際に人が手を動かせるか?】をイメージする力。
3. 「違和感に気づく」感覚
→ ちょっとしたズレや、いつもと違う配置に【「あれ?」と思えるか】が、トラブル回避の第一歩。
まとめ:図面トラブルは【先回りの気づき】で防げる
トラブルは、図面そのものよりも【「読み取り方」や「チェックの甘さ」】から生まれます。
そして、多くのトラブルは、事前に気づくことで回避できるのです。
- 寸法、配置、整合性に対して「本当に大丈夫?」と疑ってかかる
- ひとつの図面だけでなく、他の図面との関係性を常に意識
- 分からないことは「その場で聞く」「勝手に判断しない」
この姿勢こそが、【図面の読み取り力】を一段階引き上げてくれます。


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