建築業界に就職する建築学生や新入社員・若手社員のみなさんは最初に図面の読み方で苦労することが多いと思います。建築実務では大量の図面を効率よく読み解いて仕事を進めていかなくててはなりません。しかし、意外と図面の見方って教えてもらう機会が少ないものです。この記事ではこれから建築実務をはじめる人向けに図面の見方のポイントをお話していきます。
【 先輩は教えてくれない図面の見方と読み方のコツ 第10回 】
図面と施工手順を結びつけて読むコツ
~【設計図】は完成形、【現場】はプロセス~
図面を読んでいるとき、「この建物はこうなるのか」と完成後の姿をイメージすることが多いと思います。
でも実際の現場では、その完成形までどんな順番で、どう組み立てていくか=施工手順が重要です。
この【完成形(図面)】と【工程(現場)】を結びつけて考えることは、
図面を本当に使いこなす上で欠かせないスキルのひとつです。
今回は、図面から施工手順を読み解く視点と、工程との関係性を意識した図面の見方を解説していきます。
図面は「完成形」、現場は「組立工程」
設計図面は、完成後の姿を表す情報です。
でも現場では、いきなりその完成形が現れるわけではなく、基礎から順番に組み上がっていくのが現実。
つまり、設計者の図面と、現場の流れにはギャップがあるんです。
新人のうちはこのギャップに戸惑うことが多く、
- 「図面は見たけど、どうやって工事するか分からなかった」
- 「どの順番で進めればいいか見えてこない」
という悩みもよく聞きます。
図面から施工手順を読むポイント
施工の流れを意識して図面を読み取るには、次のような視点が役立ちます。
1. 施工順に意識を向ける
まずは基本的な流れを押さえましょう。
建築の一般的な順序は以下の通りです:
- 仮設工事(囲いや足場など)
- 基礎工事(杭、掘削、基礎配筋・コンクリート)
- 躯体工事(柱・梁・床などRC・S造などの構造体)
- 内装・外装工事
- 設備工事(空調・電気・給排水など)
- 仕上げ工事・検査
この流れを頭に置きながら図面を見ると、
「この部材はいつ登場するか?」
「この施工は先行して準備が必要か?」
という判断ができるようになります。
2. 断面図・詳細図は【施工の流れ】を読むのに最適
- 平面図だけだと、「完成後の見た目」は分かっても、
「どの部材がどこから出てくるか」「どう重なって納まるか」が見えにくいです。 - 断面図や詳細図には、床・壁・天井の構成や、
仕上材と下地材の関係が具体的に描かれています。
→ 下地がどこにあり、何を先に施工する必要があるのか?
を理解するためには、断面・詳細図の読み取りが非常に重要です。
3. 施工図から現場の手順をイメージする
実際の現場では、設計図をもとに【施工図(職人が施工するための詳細図)】が描かれます。
施工図を通して「どう施工していくのか?」を学ぶと、
図面がより【生きた情報】として読めるようになります。
例:
- 仕上げ材が複数重なる部分はどの順で張る?
- 先に配管してから壁を作る?逆?
- 開口まわりの見切り材の納めは、どの工程で施工される?
こういった【【工程上の都合】と【設計意図】を照らし合わせる視点】が、新人にとって大きな武器になります。
設計監理の視点:図面と工程をリンクさせる力
設計監理者の立場では、図面と施工の工程がきちんと噛み合っているかを確認する役割があります。
たとえば、
- ある設備が搬入される前に、開口が施工されているか?
- 特定の仕上材を施工するために、必要な下地は準備されているか?
といった【図面の計画】と【施工の段取り】を整合させることが求められます。
新人のうちは全体を把握するのは難しいかもしれませんが、
日々の確認で「この施工には、何を先にやる必要があるか?」という視点を持つことで、
図面の理解が格段に深まります。
まとめ:図面を「順番」で考える力が、現場での強さになる
図面は完成形の情報。
でも、現場はひとつひとつ積み上げるプロセスです。
- 平面図だけでなく、断面図・詳細図を活用しよう
- 施工順に意識を向けて「何を先に、何を後に」と読む習慣を
- 施工図や工程表を併せて見て、図面を【工程の言語】として使いこなす
この力が身につくと、設計者・現場監督・職人とのコミュニケーションにも深みが出てきます。
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